テレビドラマ『そして誰もいなくなった』

 3月25日と26日、テレビ朝日系列にてテレビドラマ『そして誰もいなくなった』が2夜連続で放送されました。

 このドラマの原作は、ご存じアガサ・クリスティー著の推理小説『そして誰もいなくなった』で、この作品は『クローズド・サークル(外界から遮断され孤立した島や館を舞台にした作品)』物としても『童謡殺人(見立て殺人)』物としても最高級の出来と評されているミステリー史上に燦然と輝く大傑作です。またクリスティ本人も自身のお気に入りに挙げており、最近では2012年に『週刊文春・東西ミステリーベスト100』でオールタイムベストの第1位に選ばれるなど、近年でも高評価を維持しています。

 そのあらすじを簡単に紹介すると、イギリスにある孤島『インディアン島』に年齢も職業も異なる10人の男女が招かれた。しかし、招待状の差出人でこの島の主でもある人物は姿を現さず、代わりに彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。その直後、一人の青年が毒薬によって死亡し、さらに翌朝、召使の女性が死体で発見される。残された者は、それが童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であること、また10個あったインディアン人形が8個に減っていることに気付く。誰が犯人か分からない疑心暗鬼の中で、一人、また一人と招待客が殺され、人形も減っていく―――とこんな感じです。

 クリスティーが好きな私としては、放送のかなり前から情報をチェックしており、それによると、10人の招待客を演じるのは仲間由紀恵、向井理、大地真央、柳葉敏郎、藤真利子、國村準、余貴美子、橋爪功、津川雅彦、渡瀬恒彦、と他のドラマで主役を張っているようなスゴイ役者さんばかり。近年のテレビドラマで、ここまで豪華なキャストは他にはないのではないでしょうか。私は放送日を今か今かと期待に胸を膨らませて待っていたのですが、その矢先、突然の訃報が飛び込んできました。招待客の一人を演じる渡瀬恒彦さんが胆管がんのため亡くなったのです。私は彼が大好きで、映画『南極物語』は映画館まで観に行きましたし、テレビドラマでも『十津川警部シリーズ』、『おみやさん』、『捜査一課9係』など欠かさず観ていました。今年に入って届いた芸能人の訃報で、私にとっては一番のショックでした。

 放送日当日、奇しくも渡瀬さんの遺作となったこの作品を、私は複雑な気持ちで観ました。そして、2夜目・・・、作品すべてを観終って、私は戦慄しました。これまで観た渡瀬さんの演技の中で、もっとも鬼気迫るものでした。やはりご病気のこともあり、あまり滑舌がいいとは言えませんでしたが、それ以上に文字通り命を削って役を演じている迫力が、画面を通して伝わってきました。詳しい説明は、作品のネタバレになるので避けますが、渡瀬さんが演じる役は、末期がんで余命いくばくもない男なのですが、これが渡瀬さん自身とも重なり、目の前で観ているものがドラマなのか現実なのか分からなくなるほど衝撃を受けました。こんなことは、長年ドラマを観ていて初めての経験でした。

 

 最後に、大好きだった渡瀬恒彦さんのご冥福をお祈りいたします。

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コメント: 1
  • #1

    名無しのあん (火曜日, 16 5月 2017 10:18)

    渡瀬さんはどことなく魅力を持った人でした。普通で平凡な感じがするのに、お亡くなりになって残念です。今の捜査一課を見ていますが、物足りなさを感じています。十津川刑事も亀さんとの掛け合いも最高でしたね。これも長いシリーズでしたね。

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