『奇跡を解く男』ジョン・ディクスン・カー①

 

 今回は、私が海外の作家で一番好きな『ジョン・ディクスン・カー』について2回に分けて書こうと思います。

 

 ジョン・ディクスン・カーはイギリスのミステリー作家で、『不可能犯罪』特に『密室』を扱った作品を数多く生み出しました。またの名を『密室の王様』、『不可能犯罪の巨匠』とも呼ばれています。また『カーター・ディクスン』という名前でも作品を数多く発表しており、登場する探偵もカー名義の作品では『ギデオン・フェル博士』、ディクスン名義の作品では『ヘンリー・メリヴェール卿』と使い分けています。しかしどちらも『口ヒゲにメガネですごい肥満体型』という鏡写しのようにそっくりな風貌なので、読者はあまり彼らを区別することなく読めると思います。

 

 以下に、彼の代表作を7つご紹介します。

 

①黒死荘の殺人

 

 別名『プレーグコートの殺人』。ヘンリー・メリヴェール卿の記念すべきデビュー作。『黒死荘』の石造りの離れで男が殺されていた。男の近くには凶器と思われる短剣と争った形跡が。しかし頑丈な扉には鍵がかかっており、窓や煙突には金網が張ってあり離れは密室状態だった――。密室もののお手本のような本作。トリックの使い方が非常に巧妙で、また犯人の隠し方も実に見事で、脂の乗ったカーの妙技を存分に堪能できます。後に横溝正史が本作に触発されて『本陣殺人事件』書いたことでも有名です。

 

②三つの棺

 

 不可能犯罪ミステリーの中で、オールタイムベストナンバー1に選ばれた傑作。ある屋敷の書斎に仮面を被った人物が押し入り、すぐに一発の銃声が。中には胸を撃たれて瀕死の住人だけがおり、犯人は煙のように消え失せていた。その住人の死後、その屋敷から離れた通りの真ん中で衆人環視の中、男が一人射殺された一報が届く。しかもその現場に残された拳銃は、なんと瀕死の住人を撃った拳銃と同じものだった――。冒頭で提示される強烈で魅力的な謎と、それを論理的に解明してゆくアクロバティックな展開が読者の度肝を抜きます。個人的にもカーの最高傑作だと思います。

 

③曲がった蝶番

 

 ある准男爵の屋敷に一人の男が現れ「自分こそが本物の准男爵だ。」と名乗り出る。その真偽を確かめるべく証人を呼びよせるが、その最中、衆人環視の中で不可解な死が起きた。自殺ならば遺体のそばに凶器がない、殺人ならば犯人を見た目撃者がいない。この殺人とも自殺ともとれない事件は、やがてその屋敷に250年以上伝わる自動人形へと繋がってゆく――。本作のメイントリックは、文章にすればたった1行で済みます。しかしその1行が、「誰からも目撃されない犯人の謎」、「ひとりでに動く自動人形の秘密」、「『曲がった蝶番』という謎めいたタイトルの意味」そのすべての答えとなるのです。その一行を読んだ時の衝撃を、私は今でも忘れられません。

 

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