ウーパールーパー

 何年も前になりますが、ウーパールーパーを飼っていたことがあります。

 ある年齢より上の方はご存知かと思いますが、ウーパールーパーとは、カップ焼きそばのCMがきっかけとなり巷で大ブレイクしたアレのことです。顔の両サイドについた謎のフサフサ、常時呆けたような微笑みを浮かべた口元、どこか見る者を不安にさせる焦点の定まらないつぶらな瞳、寒天のようにふるふるとした白くそしてうっすら桃色の体・・・このインパクト大のフォルムがCMで流れるや否やたちまち世間を虜にし、コイツが展示されている水族館やペットショップは見物客で長蛇の列が出来たほどです。今で言う「キモカワイイ」の元祖と言ったところでしょうか。

 そのウーパールーパーを飼う事になったのは、その頃ちょうど熱帯魚用水槽が一つ余っており、そこで何か面白い生き物は飼えないものかとあれこれ調べ始めたのがきっかけです。で、行きついたのがウーパールーパー。何を隠そう、自分も幼少の頃ウーパールーパーにあこがれたちびっこの一人で、親に連れられ某遊園地兼ペットショップにヤツを見に行った事もあります。幼いころ夢に見たあの謎の生物を自分の家で飼える、このロマンに私は抗うことができずに、めでたくウーパールーパーを飼育することになったのでした。

 ここで、そもそもウーパールーパーとはどんな生き物なのかを簡単に紹介しようと思います。『ウーパールーパー』とはブームの時に付けられた商品名で、正式名称は『メキシコサラマンダー』。その名の通りメキシコ原産の両生類で、イモリやサンショウウオの仲間です。両生類は普通、エラ呼吸の幼生(オタマジャクシ)を経て肺呼吸の成体に変態するわけですが、ウーパールーパーはエラ呼吸の幼生のままで成長、繁殖し、一生を過ごします。このような特殊な生物を『幼形成熟(ネオテニー)』と呼び、特にトラフサンショウウオ科の幼形成熟を『アホロートル』と呼びます。この呼び名をウーパールーパーの別名と認識している方も多いかと思います。

 そんな特殊生物の飼育は意外に簡単で、水槽にカルキを抜いた水道水を張ればそれで飼育環境のセッティングは完了です。水替えは水槽の半分の水を2日に1回、ろ過機をセットしているなら1週間に1回でもOKです。エサに関しても、現在ではウーパールーパー専用の人工飼料も市販されており手間がかかりません。唯一夏場の水温上昇にさえ気をつければ、冬場でも凍らなければ保温なしで生きていける非常に頑丈な生物です。

 ただ、そんな飼いやすく、ペットとして人気もあるウーパールーパーですが、実は野生の個体は絶滅危惧種に指定されています。もともとメキシコの高地にあるソチミルコ湖とその周辺湖にしか生息しない珍しい固有種であった上に、湖の埋め立てや環境汚染によって、その生息数は激減しているのです。現在は、環境保全活動や飼育個体をリリースする活動がされていますが、彼らにとって厳しい状況であることには変わりありません。

 とぼけた表情で見る者を癒してくれるウーパールーパーですが、その愛らしい姿の裏には過酷な現実が隠されているのです。

 

K.K

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