推理小説考~国内編②~

◎横溝正史

 前にも少し書きましたが、彼も日本の推理小説を語る上では外すことのできない偉大な作家です。明治35年(1902年)兵庫県に生まれ、本名は横溝正史(まさし)。

薬局の息子として生を受けた彼は、薬学の専門学校に通いながら処女作『恐ろしき四月馬鹿』を雑誌に投稿、見事懸賞小説一等に選ばれます。その後、大正15年(1926年)に江戸川乱歩の招きで上京し、ミステリー雑誌編集者として働きながら、細々と作家活動をスタートさせます。その後、作家一本で独立するも、直後に結核を患い療養生活を余儀なくされ、彼にとって不遇な時代が続きます。

 彼の才能が一気に開花したのは40歳を過ぎた頃で、戦争が終わり自由に推理小説が書けるようになった昭和21年(1948年)、早速『本陣殺人事件』を発表し名探偵・金田一耕助をデビューさせます。これが推理小説を待ち望んでいたファンから大絶賛を受け、ここから戦後の長編推理小説時代が幕を開けるのでした。

 彼の魅力は、やはりベテランらしい巧みな文章力と伏線の妙、そしてホラーテイストとミステリーをうまく融合させた独特の世界です。しかも彼の作品が凄いのは、それらが海外作品のモノマネでは終わらず、純和風な世界観――村社会の因習や名家の繁栄と没落などといったテーマを扱うことで、海外作家には真似できないオリジナリティーにまで昇華している点です。

 彼はその後『獄門島』、『八つ墓村』、『悪魔が来りて笛を吹く』、『犬神家の一族』、『悪魔の手毬歌』など次々と傑作長編を発表。遅咲きの地味なベテラン作家だった彼は、ついに日本推理小説界を背負って立つ存在にまでなったのです。

 しかし、1960年代に入ると、松本清張に代表される『社会派推理小説』がブームになります。『社会派推理小説』とは、遊戯性の高いこれまでの推理小説とは一線を画し、リアリティを重視し、社会問題などをテーマに扱った重厚な推理小説です。当然主人公も現実味のない名探偵より、コツコツ地道に捜査をする刑事などが好まれます。この『社会派推理小説』の台頭により、正史は旧態依然とした過去の作家という扱いになり、執筆量も激減していきます。

 しかし世の中は面白いもので、1970年代に入ると、ミステリーファンの中で過去の名作を再評価する機運が高まりだします。そしてそれに目を付けた角川書店が横溝作品を一気に文庫化して発刊、さらには作品の映画化も行い、今で言う『メディアミックス戦略』を展開しました。それにより正史を知らなかった若者たちも巻き込んで人気が一気に再燃、空前の『横溝正史ブーム』が起こり、再び彼は時代の表舞台に出るのです。

 晩年まで制作意欲が衰えなかった正史は、昭和56年(1981年)12月28日、79歳で永眠するまで次回作の構想を練っていたそうです。まさに『生涯一探偵小説家』を貫いた人生でした。

 

K.K

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