昔見た夢の話です。
夢の中で何処からともなく「おじょうさん…おじょうさん」とゆう声がかすかに聞こえてきます。声の主を探すつもりは無いものの、アタシは何となくその辺をうろうろと歩き回っていました。
遠く向うを見ると、うっすらと夕焼けのような赤い空。気づけば、「おじょうさん」と呼び掛ける声も赤い空の方から聞こえているような気がしました。
「ああ…呼ばれている…行かなきゃ」
そう思っても体はノラリクラリとなかなかいう事をききません。そうこうしているうち呼び掛ける声も、大きく乱暴になっていきました。時折、ドンドンと何かを叩く音も聞こえてきます。最初は「行かなきゃ」と思っていましたが、余りにも騒がしいので「うるさいな」と歩みを止めて休むことに…。
すると、より一層呼び声と物音が大きくなり、そこでアタシは目を覚ましました。
当時、マンションの4階に住んでおり、窓際にベッドを置いて寝ていました。
目を覚まして窓の方を向くと、窓の向こう側にオッサンがいました。オッサンは物凄い形相で「おじょうさん!」と言いながら窓を叩いてきます。よほど怒っているのかオッサンの周りが真っ赤に光っているような…「怖い…とにかくカーテンを閉めよう」と、どうにかカーテンを閉めると、ここでまた寝てしまいました。
夢の内容はまた同じ夢でした。おそらく相当大きな声で、オッサンが叫んでいるのでしょう。夢と現実がごちゃ混ぜになっています。しかし、眠気に勝るものなしです。
『睡眠続行!』と夢の中で誓った次の瞬間でした。
ドカーン!!ドカーン!!と部屋が揺れました。そして腕を掴まれて再び目を覚ましたのです。目の前には銀色のオッサンがいました。
「起きなさい!火事だよ火事!わかる?!寝てたら死ぬの!起きなさい!」
“火事”というワードを聞かされてもピンときません。何故なら、サイレンの音は聞こえてくるものの、建物自体は別段騒がしくもなく、どちらかというと静かだったからです。
その疑問に答えるかのようにオッサンは言い放ちました。
「あんたで最後なの!とにかく起きて避難して!!」
どうやらアタシが最後の一匹チャンだったようです。パンツ一丁だったのでとりあえずパジャマを着て避難しようとしましたが、この辺でイライラMAXに達した消防の方にかつがれて一気に階段を駆け下り、無事生還をはたすこととなりました。
結局のところ火事は誤報で、アタシの部屋の隣の住人が電子レンジで焼き芋を作ろうと(朝食べたいから夜中に作るバカ)長時間チンし続け煙が発生。驚いたそのまた隣の住人(バカと犬猿)が通報したとのことでした。
一連の説明を「へぇ~」と半笑いで聞きながら自分の部屋にもどろうとしたのですが、途中で消防士さんに捕まり、コッテリとお説教をいただきました。
出火基となる部屋の隣の住人が逃げ遅れたと聞かされ、はしご車を伸ばし、ずっと窓から呼びかけていたそうです。窓を割って救出しようかとも考えたらしいのですが、直ぐ傍にパンツ一丁のアタシが寝ているので、怪我を避けるために断念したとか。しかも隣の部屋に放水もしていたので、かなり消防士さんは苦労していたと聞かされました。
学生時代、ヘラヘラと避難訓練に参加しているアタシに
「本当の火事になったら、お前みたいな奴が真っ先に死ぬんだ!」と教師に言われたのを思い出すと「さすが預言者だな」と懐かしくもなる出来事でした。おしまい。
※ちなみに被害額の支払いですが、浸水した階下の部屋のクリーニングなどは全て出火(疑惑)基の住人になりましたが、ブチ破られた玄関ドアの修繕費用のみアタシ支払いという…。寝坊1回で10万とか、かなりお高い授業料。
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