最近読んだ本・凸凹デイズ

 主人公はデザイン事務所に勤務する、ごくありふれた20代の女性。その事務所(通称「凹組」)は、小さな仕事を数こなしてなんとか運営している極小事務所。彼女の同僚は、その小さな仕事を的確に振り分ける所長と、美大時代から異彩を放っていた天才肌の男性のふたりのみ。そこに主人公が加わってもとても大プロジェクトを任されるような事務所ではなかったが、とある遊園地のトータルデザイナーを募集していることを知って、プレゼンにイラストを出すと、なんと採用。凹組の面々は大きなプロジェクトを動かせる、と期待するも、なんと他会社(QQQという)との共同デザインで行く、との案をクライアントに提示されてしまう。そしてそのQQQの社長は、主人公が入る前の凹組の元社員の女性だった。その女社長は、採用案が主人公一人でデザインしたイラストだと知って、主人公を引き抜こうとする。凹組の二人は当然猛反対。共同デザインにも着手したくないと言い出す。しかし最後には「もっと自分の世界を拡げて来い」と、主人公を出向扱いでQQQに所属させ、主人公は女社長とも旧知の仲のような関係になっていく。しかし、クライアントである遊園地のプロデューサー(副社長)が逮捕されてデザイナー募集が白紙に。主人公とQQQ、凹組はどうなってしまうのか―。

 主人公を中心にストーリーは進んでいくが、語り手が社長の、女社長がいたころの回想の場面もあり、凹組に愛着を抱きやすいつくり。二つの時代を同時に楽しむことが出来てとても読み心地が良い。主人公は最終的にはQQQではなく凹組を選んで、女社長の動向なども愛らしい表現で伝えているため、誰に嫌悪することもなくハッピーエンドを迎えられた。そこからも読後感のよさが演出されている。この本から何を得た、などは正直あまりなく、エンターテイメントとしてサクサク読み進めた感じ。300ページを超えるのだが、読みづらくもなく、それどころか爽快な読み応えなので、本に近付きがたいという人でもあっさり読み終えられるような作品だ。信頼とか愛着といった道徳的なものに触れられたような気がした。読んでよかった。

 

ゆうき

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